設計事務所のM&Aでは、建築士事務所の登録と、その要である管理建築士が譲渡後も残るかが、成否を分けます。
建築士事務所は、都道府県知事の登録を受け、事務所ごとに専任の管理建築士を置かなければ業務を行えません。設計事務所の価値の多くは人と、その人が築いてきた発注者との信頼にあり、そこをどう引き継ぐかが設計の中心になります。
本稿の要点
1. 建築士の人数と資格、得意分野、発注者との継続的な関係が評価の中心になる
2. 管理建築士が譲渡後も専任で残れるかを最初に確認する
3. 建築士事務所の登録は開設者ごとに受けるため、事業譲渡では譲受側で改めて登録が必要になる
設計事務所で評価されるもの
| 要素 | 見られる点 |
|---|---|
| 登録 | 一級・二級・木造の建築士事務所登録。建設業許可や他の登録を持っているか |
| 人 | 管理建築士、一級建築士などの人数と年齢。構造・設備など専門分野の技術者 |
| 得意分野と実績 | 住宅、医療・福祉施設、商業施設、公共建築など。設計・監理の実績と受賞歴 |
| 発注者との関係 | 継続的に依頼をくれる発注者、建設会社やデベロッパーとの協力関係。公共案件の指名実績 |
管理建築士が残るかで、手法が決まる
株式譲渡であれば会社と建築士事務所の登録は残りますが、管理建築士が退任・退職すれば、代わりの管理建築士を置かない限り業務を続けられません。代表者自身が管理建築士を兼ねている事務所では、譲渡後にどのくらいの期間残るかが条件交渉の中心になります。
事業譲渡では、建築士事務所の登録は譲受側で改めて受ける必要があります。進行中の設計・監理契約を発注者の同意を得て移す手続も必要になるため、日程と説明の順序を慎重に組みます。
設計事務所のM&Aで確認すべき点
- 管理建築士と主要な建築士の継続。譲渡後の役割、処遇、在籍期間の見込みを早めに話し合います。
- 進行中の設計・監理契約。契約の相手方、報酬の受領状況、監理の残期間を整理します。
- 設計に関する責任と保険。過去の設計に関するクレームの有無と、賠償責任保険の加入状況を確認します。
- 著作物とデータの扱い。図面や設計データの管理と、その利用に関する取り決めを確認します。
どんな企業が譲受を検討するか
設計機能を内製化したい建設会社や工務店、分野や地域を広げたい設計事務所、設計と施工を一体で提供したい企業などが主な譲受候補です。
建設業のM&A全体の流れは建設業のM&Aの全体像にまとめています。
当社は建設業に特化したM&A支援機関として、設計事務所の譲渡・譲受もお手伝いしています。管理建築士と発注者との関係を守る引き継ぎ方から一緒に考えます。
ご相談と企業価値の簡易算定は無料です。社名を伏せたままでもご相談いただけます。お問い合わせフォームまたはお電話(03-3528-8810)からご連絡ください。
本稿は一般的な内容です。建築士事務所の登録・管理建築士の取扱いは個別の事情や所管により異なるため、専門家と所管の窓口にご確認ください(本稿は2026年10月時点の情報に基づいています)。