CONSTRUCTION M&A GUIDE
建設業のM&A|許可・技術者・価額・手数料・進め方の全体像
後継者がいない、技術者が足りない、受注範囲を広げたい。建設業のM&Aは、こうした課題を会社と会社の引き継ぎで解決する方法です。ただし建設業では、建設業許可と、その要件を担う人の扱いを誤ると、譲渡した翌日から工事を受注できなくなることがあります。このページでは、建設業に特化したM&A支援機関として、建設会社の譲渡と譲受に必要な知識を一つにまとめました。
このページの要点
- 建設業のM&Aでは、建設業許可が引き継げるかどうかが手法の選択を左右します。株式譲渡なら許可は会社に残り、事業譲渡・会社分割・合併は事前の認可で承継できます。
- 許可を維持できるかは、経営業務の管理責任者等と営業所技術者という「人」で決まります。誰が要件を担うかを最初に決める必要があります。
- 譲渡価額は決算書の数字だけでなく、許可の業種と区分、技術者、受注構造で大きく変わります。
- 赤字・債務超過の会社でも、事業譲渡や第二会社方式で事業と雇用を残せる場合があります。
01 WHY建設業でM&Aが増えている理由
建設業は、他の業種に比べて経営者と技術者の高齢化が進んでいる業界です。就業者のうち55歳以上が3割を超える一方、29歳以下は1割程度にとどまり、後継者も現場の担い手も確保が難しくなっています。
後継者がいない
親族や社内に後継者がいない場合、これまでは廃業が主な選択肢でした。廃業すれば許可も技術者も取引関係も失われますが、M&Aであれば事業と雇用を残したまま引き継ぐことができます。選択肢の比べ方は建設会社の後継者がいないとき、選べる道は4つあるで解説しています。
技術者を採用だけでは確保できない
1級施工管理技士などの資格者は、求人を出しても集まりにくくなっています。資格者が在籍する会社を組織ごと迎えることは、譲受側にとって有力な人材確保の手段です。2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、人員の確保はさらに重要になりました。
許可を承継できる制度が整った
令和2年10月施行の建設業法改正により、事業譲渡・合併・会社分割でも、事前の認可を受ければ建設業許可を承継できるようになりました。会社ごと引き継ぐ株式譲渡以外の手法も、建設業で選びやすくなっています。
02 VALUE建設会社の何が評価されるのか
建設会社の譲受を検討する企業の多くは、利益そのものより、自社だけでは手に入りにくいものを求めています。
| 評価される要素 | 見られる点 |
|---|---|
| 建設業許可 | 29業種のどれを持っているか。一般か特定か。譲受側に不足している業種を持っていれば評価が大きく上がることがある |
| 技術者 | 営業所技術者(旧:専任技術者)や現場の資格者の人数、資格の種類、年齢。譲受後も働き続ける見込みがあるか |
| 受注構造 | 元請か下請か、公共か民間か。特定の取引先に偏っていないか。経営事項審査の評点や入札参加資格の格付け |
| 協力会社と地域 | 長年の協力会社の網、特定の地域での施工実績と信用 |
| 財務 | 時価に引き直した純資産と、正常な状態での収益力 |
評価の考え方は建設会社の譲渡価額は、決算書の数字だけでは決まらないで詳しく解説しています。
03 SCHEMEM&Aの手法と建設業許可
建設業のM&Aでは、どの手法を選ぶかで建設業許可の扱いが変わります。
| 手法 | 建設業許可の扱い |
|---|---|
| 株式譲渡 | 会社はそのまま存続するため、許可も許可番号も変わらない。役員等に変更があれば変更届が必要 |
| 事業譲渡 | 譲渡の効力発生前に国土交通大臣または都道府県知事の認可を受ければ、譲受側が許可を承継できる。事後の申請は認められない |
| 会社分割 | 事業譲渡と同様に、効力発生前の認可で承継できる。新設分割で受け皿会社を作る場合も対象 |
| 合併 | 効力発生前の認可を受ければ、存続会社または新設会社が許可を承継できる |
事業譲渡・会社分割・合併で認可を受ける場合は、認可の日程から逆算してクロージング日を決める必要があります。日程を先に決めてから申請に入ると、譲渡自体を延期することになりがちです。
手法ごとの違いは建設業許可はM&Aで引き継げるのか、一部の業種だけを引き継ぎたい場合は建設業許可、一部の業種だけ引き継げるかをご覧ください。
04 PERSON許可を支える「人」の要件
建設業許可は、会社に要件を満たす人がいることで維持されます。M&Aでは、この人が譲渡後も残るかどうかが最大の論点になります。
経営業務の管理責任者等
経営業務の管理責任者等(旧:経営業務管理責任者)は、建設業の経営経験を持つ常勤の役員等です。社長が一人でこの要件を満たしている会社では、社長が退任すると許可を維持できません。譲受側の役員が要件を満たすか、社長が一定期間役員として残るかを、譲受先を選ぶ段階で決めておく必要があります。
営業所技術者
営業所技術者は、許可業種ごとに営業所に置く技術者です。交渉中に退職すると、その業種の許可を維持できなくなる恐れがあり、条件の再交渉や譲渡の見直しにつながります。キーパーソンへの説明の時期と内容は、慎重に設計します。
05 PROCESS建設業M&Aの進め方
譲渡をお考えの場合の、一般的な流れです。
- ご相談・現状の整理。譲渡の目的、時期、残したいもの(雇用、社名、取引関係)を整理します。
- 企業価値の簡易算定。譲渡価額の目安と、手法別の手取りを試算します。
- 仲介契約またはFA契約の締結。手数料の算定基準・金額・支払時期を書面でご説明したうえで契約します。
- 譲受候補の探索と打診。社名を伏せた概要資料で打診し、関心を示した企業と秘密保持契約を結んでから詳細を開示します。打診先は事前にご承認いただいた企業に限ります。
- トップ面談。経営者同士で、事業の方針や従業員の処遇を確認します。
- 基本合意。価額の目安、手法、スケジュール、独占交渉の期間などを合意します。
- デューデリジェンス。譲受側が財務・法務・労務・許可の状況を調査します。
- 最終契約とクロージング。契約を締結し、代金の決済と引き渡しを行います。事業譲渡等では、この前に許可承継の認可を受けます。
- 引き継ぎ(PMI)。従業員・取引先への説明、許可の変更届、組織の統合を進めます。
期間は案件によって大きく異なりますが、許可承継の認可が必要な場合は、その審査期間を見込んで日程を組みます。再生案件のように時間の制約が厳しい場合は、数週間で成立させることもあります。
06 PRICE譲渡価額と手取り
中小の建設会社の譲渡価額は、時価に引き直した純資産と、正常な状態での収益力を土台に算定されることが多く、そこに許可や技術者の評価が加わります。最終的な価額は、算定ではなく譲受側との交渉で決まります。
ただし、譲渡価額がそのまま手元に残るわけではありません。株式譲渡か事業譲渡かで税金のかかり方が変わり、役員退職金の組み合わせ方でも手取りは変わります。詳しくは「譲渡価額」と「手元に残る金額」は違うをご覧ください。
07 FEE手数料の仕組み
M&Aの成功報酬はレーマン方式で計算されることが多いものの、料率を譲渡価額に掛けるか、借入金を含む移動総資産に掛けるかで金額は数倍変わります。借入金の多い建設会社では、この違いが特に大きくなります。最低報酬や着手金の有無も含めて比べる必要があります。
確認すべき点はM&Aの手数料は「何に料率を掛けるか」で大きく変わるに、当社の費用はサービス内容の費用の考え方にまとめています。
08 DISTRESS赤字・債務超過の場合
赤字が続いている、債務超過になっている場合でも、建設会社の許可・技術者・取引関係には価値があり、譲受を検討する企業は見つかります。会社ごと引き継ぐことが難しくても、事業譲渡や第二会社方式で事業だけを引き継ぐ方法があります。
09 BUYER譲受をお考えの企業へ
建設会社の譲受では、許可を持つ会社を取得すれば受注範囲が広がるとは限りません。経営業務の管理責任者等と営業所技術者が残るか、社会保険の加入や労務管理に問題がないか、進行中の工事に赤字のものがないかを確認する必要があります。
当社は、建設業許可の29業種と一般・特定の区分を踏まえて、譲受側の目的に合う会社を探索します。再生案件のスポンサーとしての譲受にも対応しています。確認すべき点は建設会社を買う前に確認すべき8つのことにまとめています。
10 INDUSTRY業種別のM&A
建設業のM&Aでは、業種ごとに評価されるものと、建設業許可以外に必要な手続が異なります。主な業種の論点をまとめています。
- 舗装工事会社のM&A|重機と公共工事の実績、入札参加資格の扱い
- 内装工事会社のM&A|職人と元請との関係の引き継ぎ
- 管工事会社のM&A|建設業許可と水道事業者の指定
- 電気工事会社のM&A|建設業許可と電気工事業法の登録
- 工務店のM&A|引き渡し済み住宅への責任
- 設計事務所のM&A|建築士事務所登録と管理建築士
11 FAQよくあるご質問
建設会社をM&Aで譲渡すると、建設業許可はどうなりますか?
株式譲渡であれば会社がそのまま存続するため、許可も許可番号も変わりません。事業譲渡・会社分割・合併の場合は、効力発生前に国土交通大臣または都道府県知事の認可を受ければ、許可を承継できます。いずれの場合も、経営業務の管理責任者等と営業所技術者の要件を譲渡後も満たせるかが前提になります。
社長が退任しても、許可は維持できますか?
社長が経営業務の管理責任者等の要件を担っている場合、退任すると許可を維持できません。譲受側の役員が要件を満たすか、社長が一定期間役員として残るかのいずれかが必要です。
小さな建設会社でも譲渡できますか?
できる場合があります。譲受側は売上規模よりも、許可の業種、技術者、取引関係を重視することが多く、小規模でも資格者が在籍している会社や、譲受側に不足している業種を持つ会社は評価されます。
赤字や債務超過でも譲渡できますか?
できる場合があります。会社ごとの譲渡が難しい場合でも、事業譲渡や第二会社方式で事業と雇用を引き継ぐ方法があります。資金が尽きる前に相談するほど、選択肢は広がります。
相談に費用はかかりますか?
初回のご相談から企業価値の簡易算定まで、費用はかかりません。手数料が発生するのは仲介契約またはFA契約を締結してからで、契約前に算定基準・金額・支払時期を書面でご説明します。
本ページは、建設業のM&Aに関する一般的な情報をまとめたものです。個別の案件での判断は、許可行政庁、税理士、弁護士等の専門家にご確認ください。制度は改正により変動します(本ページは2026年10月時点の情報に基づいています)。