第二会社方式とは|債務超過の建設会社が、事業と雇用を残すための仕組み

解説・コラム

債務超過に陥った建設会社でも、事業そのものには価値が残っていることがあります。許可、技術者、施工実績、元請との関係。問題は、その事業が過大な借入と一緒になっていることです。「第二会社方式」は、事業と債務を切り分けて、事業だけを次の会社に引き継ぐための方法です。

第二会社方式とは何か

第二会社方式は、収益の見込める事業を、事業譲渡や会社分割によって新しい会社(第二会社)に移し、過大な債務が残った元の会社は特別清算や破産によって整理する方法です。事業を受け入れる会社は、新たに設立することもあれば、スポンサーとなる既存の企業がその役割を担うこともあります。

基本の流れ

  1. 事業の価値と、清算した場合に債権者が回収できる額を算定する
  2. 受け皿となる会社(新会社またはスポンサー企業)を決める
  3. 金融機関など主要な債権者と協議し、計画に同意を得る
  4. 事業譲渡または会社分割で、事業・従業員・必要な資産を移す
  5. 譲渡代金で債務を弁済し、元の会社を特別清算・破産などで整理する

元の会社の債務は、新しい会社には原則として移りません。そのため、債務超過の会社の事業でも、受け皿となる会社は「事業の収益力」だけを見て引き受けを判断できます。

なぜ債務超過の会社で使われるのか

債務超過の会社をそのまま株式譲渡しようとすると、譲受側は借入金もすべて引き継ぐことになります。事業に魅力があっても、債務の大きさで話が止まってしまいます。

第二会社方式では、譲受側が引き継ぐ範囲を事業に限定できます。債権者にとっても、会社をそのまま破産させるより、事業を適正な価格で売却して代金を弁済に充てるほうが、回収額が大きくなる場合が少なくありません。清算した場合より債権者に有利であることを数字で示せるかどうかが、この方式を成立させる鍵です。

事業譲渡と会社分割、どちらで移すか

項目 事業譲渡 会社分割
契約・従業員 個別に同意を得て移す 包括的に承継できる
債務の扱い 引き継ぐものを契約で選ぶ 分割契約・計画で定める。残された債権者を害する分割には履行請求の規定がある
建設業許可 事前の認可で承継できる 事前の認可で承継できる
向いている場面 引き継ぐ範囲を絞りたい/スポンサーが既存企業 取引先・従業員が多く、個別の同意取得が難しい

会社分割では、分割会社に残された債権者を害することを知って分割した場合、残存債権者が承継会社に対して債務の履行を請求できる規定があります(会社法第759条第4項など)。事業譲渡でも、不当に安い価格での譲渡は詐害行為として争われるおそれがあります。適正な対価と、債権者への丁寧な説明が欠かせません。

建設業で特に気をつけること

許可の空白期間を作らない

2020年10月の建設業法改正により、事業譲渡や会社分割でも、事前に認可を受ければ建設業許可を承継できるようになりました(建設業法第17条の2)。ただし認可の申請には準備と審査の期間が必要です。許可の承継が間に合わないと、第二会社は受注ができません。クロージング日から逆算した段取りが前提になります。詳しくは建設業許可はM&Aで引き継げるのかで解説しています。

進行中の工事と協力会社

施工中の工事をどちらの会社で完成させるか、発注者にどう説明するか、協力会社への未払いを誰が負担するか。この3点を早い段階で決めておかないと、現場が止まり、事業価値そのものが失われます。

経営事項審査

公共工事を受注している会社では、第二会社で経審をどう受け直すかも論点です。事業の移し方によって評点の引き継ぎ方が変わるため、公共工事の比率が高い会社ほど事前の確認が重要です。

公的な支援の枠組み

第二会社方式は、中小企業活性化協議会の支援を受けて進めることもあります。協議会が関与することで、金融機関との調整を中立的な立場で進めやすくなります。また、国の認定を受けた計画にもとづいて進める場合、許認可の承継や税負担の軽減に関する特例を使えることがあります。

旧会社と社長個人の整理

事業を移した後の旧会社は、特別清算または破産で整理するのが一般的です。特別清算は債権者の同意が前提になるため、主要な金融機関との合意形成が進んでいる場合に選ばれます。

社長が会社の借入に個人保証をしている場合は、経営者保証ガイドラインに沿って保証債務の整理を金融機関と協議できる場合があります。会社の整理と保証の整理は、同じ計画の中で一体として設計することが大切です。

第二会社方式は、残された時間が長いほど設計の自由度が高くなります。資金が尽きる直前では、取れる手が限られます。赤字・債務超過の段階ごとに取り得る選択肢は、赤字・債務超過の建設会社のM&Aのページで整理しています。

当社では、初回のご相談から企業価値の簡易算定、譲渡と清算の比較まで無料でお受けしています。社名を伏せたままでも構いません。お問い合わせフォーム(24時間受付)または電話 03-3528-8810 からご連絡ください。

※本記事は一般的な制度と実務の考え方をまとめたものです。個別の案件で取り得る方法は、財務・債権者の状況や許可の内容によって異なります。法的手続や税務の判断は、弁護士・税理士と連携して行います。