M&Aの手数料は「何に料率を掛けるか」で大きく変わる|建設業M&Aの報酬の仕組み

解説・コラム

M&Aの手数料を比べるとき、料率の5%や3%という数字だけを見ていないでしょうか。

手数料の多くはレーマン方式で計算されますが、料率を何に掛けるかは支援機関によって異なります。同じ5%でも、基準が違えば手数料は数倍変わります。さらに最低報酬、着手金、中間報酬の有無によって、実際に支払う総額は大きく変わります。

本稿では、建設業のM&Aで手数料がどのように決まるのかを整理し、契約前に確認すべき点をまとめます。

本稿の要点

1. 成功報酬はレーマン方式が一般的だが、料率を掛ける基準(譲渡価額か、移動総資産か等)で金額が大きく変わる

2. 借入金の多い建設会社では、移動総資産を基準にすると手数料が膨らみやすい

3. 最低報酬があると、小規模な案件では料率より最低報酬で手数料が決まる

4. 中小M&Aガイドラインは、算定基準・金額・支払時期を契約前に書面で説明するよう求めている

手数料は、4つの要素でできている

要素 内容
着手金 契約締結時に支払う費用。成約しなくても返還されないことが多い。無料の支援機関もある
月額報酬 契約期間中に毎月支払う費用。リテイナーとも呼ばれる。設けていない支援機関も多い
中間報酬 基本合意の締結時など、途中の段階で支払う費用
成功報酬 M&Aが成立したときに支払う費用。手数料の大半を占める

着手金や中間報酬が、後の成功報酬から差し引かれるかどうかも確認すべき点です。差し引かれなければ、その分だけ総額が増えます。

成功報酬はレーマン方式で計算されることが多い

レーマン方式は、基準となる金額を段階に分け、段階ごとに異なる料率を掛けて合計する計算方法です。金額が大きくなるほど、上乗せ部分の料率が下がります。

基準となる金額 料率の一例
5億円以下の部分 5%
5億円超〜10億円以下の部分 4%
10億円超〜50億円以下の部分 3%
50億円超〜100億円以下の部分 2%
100億円超の部分 1%

たとえば基準となる金額が8億円なら、5億円×5%=2,500万円と、3億円×4%=1,200万円を足して、成功報酬は3,700万円になります。

「何に料率を掛けるか」で、手数料は大きく変わる

レーマン方式の料率表が同じでも、基準となる金額の定義は支援機関によって違います。主なものは次のとおりです。

基準 内容
譲渡価額 株式や事業の対価として受け取る金額
受取総額 譲渡価額に、役員退職金など、譲渡に関連してオーナーが受け取る金額を加えたもの
移動総資産 譲渡価額に、譲受側に引き継がれる負債を加えたもの。株式譲渡なら会社の借入金も含まれる

同じ5%でも、基準で手数料が4倍になる例

株式の譲渡価額が1億円、会社に借入金が3億円ある場合

譲渡価額を基準にすると 1億円×5%=500万円

移動総資産を基準にすると (1億円+3億円)×5%=2,000万円

建設会社は、重機や車両の購入、工事の立替資金のために借入金が多くなりがちです。移動総資産を基準にすると、手元に入る金額に比べて手数料が大きく膨らむことがあります。受け取る金額と手数料の関係は、譲渡価額や受取総額を基準にした方が分かりやすくなります。

最低報酬で決まる案件も多い

多くの支援機関は、成功報酬に最低報酬を設けています。料率で計算した額が最低報酬を下回る場合は、最低報酬が成功報酬になります。

上の例で、譲渡価額を基準とする支援機関の最低報酬が1,500万円なら、料率で計算した500万円ではなく1,500万円が成功報酬になります。小規模な案件では、料率よりも最低報酬の金額が手数料を決めることになるため、料率表と最低報酬は必ずセットで確認してください。

仲介とFAで、手数料を払う相手が変わる

仲介は譲渡側・譲受側の両方と契約し、双方から手数料を受け取ります。FAは一方の当事者とだけ契約し、その依頼者だけから手数料を受け取ります。

どちらが良いかは案件によりますが、仲介の場合は支援機関が双方から報酬を受け取る立場にあることを理解したうえで契約することが大切です。仲介かFAかは、契約前に書面で明示されるべき事項です。

手数料にかかる税務

  • 譲渡側(個人株主)。株式譲渡の手数料は、譲渡にかかった費用として譲渡所得の計算上差し引くことができます。
  • 譲受側(法人)。株式を取得するための手数料は、原則として株式の取得価額に含めて計上し、その期の費用にはなりません。
  • 消費税。手数料には消費税がかかります。提示額が税込か税別かも確認してください。

また、国の事業承継・M&A補助金には、M&A支援機関登録制度に登録された支援機関への手数料などを対象に、費用の一部を補助する枠があります。対象や補助上限は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で確認が必要です。

契約前に確認したい8つの点

中小M&Aガイドライン(第3版)は、支援機関が契約前に、手数料の算定基準・金額・支払時期などを書面で説明するよう求めています。次の点が説明されているかを確認してください。

  1. 成功報酬の算定基準は、譲渡価額・受取総額・移動総資産のどれか
  2. 料率表と、最低報酬の金額
  3. 着手金・月額報酬・中間報酬の有無と金額
  4. 着手金や中間報酬が、成功報酬から差し引かれるか
  5. 金額は税込か税別か
  6. 仲介かFAか
  7. 専任条項の有無と期間、途中で解約できるか
  8. テール条項の期間と、対象となる相手の範囲

テール条項や専任契約の考え方は、建設業M&Aのよくあるご質問でも解説しています。建設業のM&A全体の流れは建設業のM&Aの全体像にまとめています。

当社の手数料

参考として、当社の手数料体系を示します。

項目 内容
譲渡をお考えのオーナー様 着手金150万円(仲介契約・FA契約の締結時)、中間報酬なし
譲受をお考えの企業 着手金なし、中間報酬150万円(基本合意の締結時)
成功報酬 レーマン方式(上記の料率表)。基準は譲渡価額に役員退職金等を加えた受取総額
最低報酬 1,500万円

金額はいずれも税別です。着手金・中間報酬は成功報酬から差し引くため、支払総額がその分だけ増えることはありません。詳しくはサービス内容の費用の考え方をご覧ください。

当社では、仲介契約・FA契約の締結前に、算定基準・料率・最低報酬・支払時期を重要事項説明書により書面でご説明し、ご納得いただいたうえで契約します。

初回のご相談から企業価値の簡易算定まで、費用はかかりません。他社から提示された手数料の見方についてのご相談も承ります。お問い合わせフォームまたはお電話(03-3528-8810)からご連絡ください。

本稿は、M&Aの手数料の仕組みを説明するための一般的な内容です。他の支援機関の手数料体系はそれぞれ異なり、本稿の例は単純化したものです。税務上の取扱いは個別の事情により異なるため、具体的な判断は税理士にご確認ください。補助金の要件は公募回ごとに変わります(本稿は2026年10月時点の情報に基づいています)。

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