建設会社を譲り受ければ、許可も技術者も取引先も手に入る。そう考えて進めた案件ほど、譲受後に想定外の問題が見つかります。
建設会社の価値の多くは、決算書の外にあります。だからこそ、決算書の外にあるリスクも、契約前に確かめておく必要があります。本稿では、譲受をお考えの企業が確認すべき8つの点を整理します。
本稿の要点
1. 許可を取得しても、要件を担う人が残らなければ維持できない。最初に「人」を確認する
2. 社会保険、未払い残業代、進行中の赤字工事など、決算書に表れにくい負担を調べる
3. 見つかった論点は、価額の調整か契約上の補償で手当てする
契約前に確認すべき8つのこと
- 許可の要件を担う人が残るか。経営業務の管理責任者等と営業所技術者が誰で、譲受後も在籍するか。残らない場合、自社の役員や技術者で要件を満たせるかを確認します。
- 許可の業種と区分が目的に合っているか。欲しいのは特定の業種か、特定建設業の区分か、地域での実績か。取得したい理由と、対象会社の許可が一致しているかを確かめます。
- 技術者と職人の年齢と意向。資格者が高齢で数年内に退職する見込みであれば、取得の意味が薄れます。キーパーソンの意向は、トップ面談の段階から確認します。
- 社会保険と労務。社会保険の未加入、未払いの残業代、一人親方との契約実態は、是正の費用と現場への入場制限の両面で影響します。
- 進行中の工事の採算。工事ごとの実行予算と進捗を見て、赤字工事や追加費用の発生が見込まれる工事がないかを確認します。
- 取引先との関係と契約条項。元請や発注者への依存度、支配権の変更に関する条項の有無を確認し、譲受後も取引が続くかを見極めます。
- 簿外の負担と保証。工事の瑕疵に関する請求、会社が保証人になっている債務、係争中の案件などを洗い出します。
- 重機・車両・不動産の実態。帳簿と実物が一致しているか、所有権はどこにあるか、リースや割賦の残債はいくらかを確認します。
見つかった論点は、価額か契約で手当てする
調査で論点が見つかっても、それだけで譲受を見送る必要はありません。金額で見積もれるものは価額の調整で、見積もれないものは契約上の表明保証や補償で手当てするのが一般的です。株式譲渡ではなく事業譲渡を選び、引き継ぐ資産と負債を限定する方法もあります。
事業譲渡で建設業許可を承継する場合は、譲渡の効力発生前に許可行政庁の認可を受ける必要があります。認可の日程から逆算してスケジュールを組まないと、譲受後に工事を受注できない期間が生じます。
譲受の目的から逆算する
確認すべき点は多いものの、すべてを同じ重さで見る必要はありません。技術者の確保が目的なら人の継続を、許可業種の追加が目的なら要件と区分を、地域進出が目的なら取引先と実績を、それぞれ最優先で確認します。
許可の承継については建設業許可はM&Aで引き継げるのか、業種ごとの論点は業種別のM&Aにまとめています。
当社は建設業に特化したM&A支援機関として、譲受側の支援も行っています。譲受の目的に合う会社の探索から、許可の承継を前提にしたスケジュール設計、デューデリジェンスの論点整理まで一貫してお手伝いします。
ご希望の地域・業種・規模をお知らせいただければ、条件に合う案件を個別にご案内します。お問い合わせフォームまたはお電話(03-3528-8810)からご連絡ください。
本稿は一般的な内容です。個別の案件での調査範囲や契約条件は、弁護士・公認会計士・税理士等の専門家と相談のうえご判断ください(本稿は2026年10月時点の情報に基づいています)。