税金・社会保険料の滞納があっても、事業譲渡はできるか|差押えの前にやるべきこと

解説・コラム

税金や社会保険料の滞納が続いている会社でも、事業を譲渡できるか。結論から言えば、できる場合があります。ただし滞納は、放置すると預金や売掛金の差押えに進み、会社の資金繰りを一気に止めてしまいます。差押えを受ける前に何をすべきか、事業譲渡で滞納がどう扱われるかを整理します。

滞納から差押えまでは、思っているより早い

税金を納期限までに納めないと、督促状が届きます。国税の場合、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しなければ、差押えができる状態になります。社会保険料も、督促と差押えの仕組みは同様です。

実務では、分納の相談をしている間は差押えが見送られることもありますが、約束どおりに納められなくなると、ある日突然、取引銀行の預金や元請からの売掛金が差し押さえられます。建設会社にとって、売掛金の差押えは協力会社への支払いが止まることを意味します。現場が止まれば、事業の価値そのものが失われます。

まず打つべき手:猶予制度の相談

一時に納付すると事業の継続が困難になる場合には、税務署や年金事務所に、納付の猶予や換価の猶予を申請できる制度があります。認められれば、分割での納付が認められ、差押えや財産の換価が猶予されることがあります。申請には期限や要件があるため、滞納に気づいた段階で早めに相談することが重要です。

猶予は問題を先送りする手段ではなく、事業を立て直す、あるいは事業を譲渡するための時間を確保する手段です。猶予期間中に、事業をどう残すかの方針を決めておく必要があります。

事業譲渡で、滞納はどう扱われるか

事業譲渡では、譲受側は契約で定めた資産・負債だけを引き継ぎます。滞納している税金や社会保険料は、原則として譲渡した側の会社に残ります。譲渡代金は、まず滞納の解消や債務の弁済に充てるのが一般的です。

ただし、次の場合には注意が必要です。

譲受側に納税義務が及ぶおそれがある場面

  • 親族や関係会社が事業を譲り受ける場合:一定の特殊な関係にある者が、同じ場所で同じような事業を引き継ぐと、譲受側が滞納分について第二次納税義務を負うことがあります(国税徴収法第38条)。
  • 著しく低い価格で譲り受ける場合:無償や著しく低い額で財産を譲り受けた者にも、第二次納税義務が及ぶことがあります(国税徴収法第39条)。
  • 会社分割で事業を移す場合:分割によって事業を承継した会社が、分割前の会社の国税について一定の範囲で連帯納付の責任を負う規定があります(国税通則法第9条の3)。

第三者のスポンサー企業が、適正な価格で事業を譲り受ける形であれば、これらの問題は起きにくくなります。逆に、身内で受け皿会社を作って事業を移す方法は、滞納がある場合に大きなリスクを抱えます。

差押え目前から、事業を残した例

当社が支援した施工管理会社では、債務超過に加え、公租公課の滞納で差押えが目前に迫っていました。施工管理チームを求める総合建設会社へ事業を譲渡し、旧会社は破産で整理しています。仕掛工事と協力会社への未払いは譲受側が引き継ぎ、従業員は全員が移りました。相談の翌日にトップ面談を行い、約2週間で完了しています。詳細は相談の翌日に面談。2週間で、事業を次へつないだをご覧ください。

建設業で、同時に確認すべきこと

  • 社会保険の加入状況:適切な社会保険への加入は建設業許可の要件です。譲受側のデューデリジェンスでも必ず確認されるため、滞納の状況とあわせて事前に整理しておきます。
  • 建設業許可の承継:事業譲渡で許可を引き継ぐには、事前の認可が必要です。審査期間を見込んだ日程が必要なため、時間の制約が厳しい案件ほど早い着手が欠かせません。
  • 納税証明書:公共工事の入札参加資格では、未納がないことの証明を求められるのが一般的です。滞納があると、受け皿となる会社の側でも段取りを考える必要があります。

滞納がある案件は、時間との勝負です。差押えを受ける前であれば、猶予制度で時間を確保し、その間にスポンサーを探すことができます。赤字・債務超過の段階ごとの選択肢は、赤字・債務超過の建設会社のM&Aのページで整理しています。

当社では、初回のご相談から企業価値の簡易算定、譲渡と清算の比較まで無料でお受けしています。社名を伏せたままでも構いません。お問い合わせフォーム(24時間受付)または電話 03-3528-8810 からご連絡ください。

※本記事は一般的な制度と実務の考え方をまとめたものです。個別の案件で取り得る方法は、財務・債権者の状況や許可の内容によって異なります。法的手続や税務の判断は、弁護士・税理士と連携して行います。